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Fukuoka Higashi Zaitaku Care Network

診療所(クリニック)CLINIC

在宅ケアにおける診療所の役割

在宅医療とは
 
在宅医療とは3つの医療アクセス(病院・外来・在宅) の1つで、その言葉どおり医師が患者さんの自宅や居宅 (グループホーム・有料老人ホーム・サービス付高齢者住宅など) にうかがって診療するものです。身体の衰え・身体の麻痺・病気の後遺症などで通院が困難な患者さんが対象となります。患者さんにとって在宅医療を受ける最大のメリットは、「住み慣れた家で生活ができること」だと思います。家にいて家族・友人を含めた社会との交流があり、住み慣れた場にいることの快適さ・安心感を保ちながら医療を受けることができます。在宅医療には計画を立て定期的に行う「訪問診療」と、発熱など急な状態変化で緊急・凖緊急的に行う「往診」の2つがあります。

在宅医療制度の歴史
 
住み慣れた地域で療養生活を継続したいと願う患者さんのために、日本でも 在宅医療の制度が少しずつ整備されてきました。戦後まもない1948年に制定された医療法では医療を提供する場所を診療所と病院に限っており、在宅における医療は「往診」として突発的な例外的医療とされていました。これに対し1992年には第2次医療法改正により医療を行う場として“医療を受ける者の居宅等が法的に認められ、在宅医療が正式に誕生しました。2006年には、在宅医療をさらに推進するため「在宅療養支援診療所」が整備されました。現在の主治医や「かかりつけ医」が在宅医療を提供できる機能を持っていればよいのですが、そうでなくても相談すれば状況に応じて、「在宅医療を提供している診療所」や「在宅療養支援診療所」を紹介してもらえるでしょう。

在宅医療の適応
 
保険診療上の在宅医療の対象は「寝たきりまたはこれに準ずる状態で通院困難な者」となっていますが、病気の重症度・日常生活動作・要介護度などによる具体的な基準はありません。個々の患者さんが該当するかどうかは医師の判断によります。下記のような患者さんは在宅医療の適応となる可能性があります。
1 脳梗塞後遺症・外傷後遺症・神経筋疾患などで通院が困難な方
2 認知症・日常生活動作の低下・寝たきり状態などで通院が困難な方
3 心臓疾患・肺疾患などで通院が困難な方
4 様々な障害で通院が困難な方
5 悪性疾患などで予後が悪く自宅で最期を迎えたいと希望されている方


在宅で可能な検査と医療処置
 
在宅では下記のような検査や医療処置が可能ですが、診療所によっては提供できない場合があります。具体的には在宅医療を提供している医師にご相談下さい。
血液検査・動脈ガス分析検査・尿検査・培養検査・心電図検査・超音波検査 (心臓・血管・腹部) ・末梢静脈からの点滴や注射・インスリン自己注射の管理・在宅酸素療法・人工呼吸器の管理・中心静脈栄養の管理・経管栄養の管理 (経鼻・食道瘻・胃瘻・腸瘻カテーテルなど) ・導尿・自己導尿の管理・膀胱留置カテーテルの管理・褥瘡の処置・縫合などの創処置・疼痛管理 (医療用麻薬によるがん性疼痛管理を含む) など


在宅療養支援診療所の役割
 
在宅ケアにおいて、診療所に求められている役割は幅広く、大きく (1) かかりつけ医としての役割、(2) 在宅ケア医としての役割、(3) 地域緩和ケア医としての役割、の3つがあります。(1) かかりつけ医としての役割には、感冒や頭痛などよくある急性疾患への対応、高血圧や糖尿病など慢性疾患のマネージメントなどが含まれます。(2) 在宅ケア医としての役割には、在宅での検査や処置はもちろん、連携医療機関・薬剤師・訪問看護師・介護支援専門員 (ケアマネージャー) などとの連携が含まれます。がんをはじめ様々な疾患で、患者さんがもつ身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛を和らげることを緩和ケアと呼んでいます。(3) 地域緩和ケア医としての役割には、それぞれの患者さんに応じて、必要な緩和ケアや家族に対するサポートを提供することが含まれます。「在宅医療を提供している診療所」は、(1) 〜(3) の役割を担う努力をしていますし、「在宅療養支援診療所」には(1) 〜(3) の役割を担うために、患者さんの求めに応じて、必要があれば24時間365日いつでも往診することなどが義務付けられています。

病診連携と多職種連携
 
診療所は、がん診療連携拠点病院や地域急性期病院と連携 していますので、在宅療養中であっても急変時や検査が必要な時は入院することができます。これを「病診連携」と呼んでいます。また、がん患者さんで集中的な緩和ケアを必要とする時は、緩和ケア病棟に一時的に入院してケアを受けることもできます。「福岡東在宅ケアネットワーク」では、訪問診療を受けているがん患者さんは、必要時には優先的に緩和ケア病棟に入院できるようになっています。
 医療サービスのみで患者さんの地域生活・在宅療養を支えることはできません。そこには医師(歯科医を含む)のみでなく、看護師、薬剤師、理学・作業・言語療法士、栄養士、介護職員、ケアマネージャーなどのさまざまな専門職の人たちが連携してケアにあたることが必要です。これを「多職種連携」と呼んでいます。例えば、患者さんの症状や状態の変化は訪問看護師より医師へ報告され、医師はその情報に基づいて往診したり、治療内容を変更したりします。また、医師とケアマネージャーが連携することで、必要な介護サービスを適切に提供できます。


さいごに
 
「かかりつけ医」が在宅医療を提供できる機能を持っていることが理想ですが、そうでなくても現在の主治医やかかりつけ医に相談すれば状況に応じて「在宅医療を提供できる診療所」や「在宅療養支援診療所」を紹介してもらえます。
 様々な疾患や障害があってもご自宅で生活したいと願う患者さんやご家族をサポートするために、「かかりつけ医」や「在宅療養支援診療所」は存在しています。医療サービスではない事でも、様々な相談に「かかりつけ医」は耳を傾けてくれますし、必要があればそれぞれの専門家を紹介してくれます。何でも相談してください。

(福岡県在宅医療を担う地域リーダー・あおばクリニック 伊藤大樹)

福岡東在宅ケアネットワーク

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